海のような場所で、目線より少し上のあたりを、船のようなものが進む。小型の船で、どういう動力で進んでいるのかよくわからない。二人の人間が乗っているのが見える。周囲が柵で囲われていて、その囲いの奥と、手前とに、それぞれ人がいる。お互いがすれ違ってお互いの場所まで行き来できるような幅の奥行きがありそうだが、行き来するわけではないようだ。それぞれの持ち場を守るようにして立っているだけだ。手前に立ってる人は後ろを向いている。やや下向きに俯いた姿勢でいる。進行方向に背を向けている格好だが、物音で気配を察しているのかもしれない。むしろ、ああして後ろ向きでいた方が、今この情況においては、それで良いのかもしれない。そういう合理的な判断がなされているのかもしれない。方向をゆったりと変えつつ、船が進む。後方で推進力を制御しているのだろうか。後方の仕事はあまりよく見えなくて、想像するしかない。いやそんなことを言ったら、手前の人の仕事だって、実際はよくわからない。でも何か、仕事であるのは確かだろう。少し近づいてみると、二人の会話が聞こえてきそうだ。もしかすると、彼らがいったい何を話しているのか、聞くことができるかもしれない。船の先にゆっくりと近づいていくと、手前の人がくるりと振り返った。そして、いらっしゃいませ、と言う。こちらはやや驚いたが、気を取り直して舳先に貼り付けられたメニューを見ると、いくつか注文した。店内ですか?と聞かれたのでテイクアウトと答えた。