前日の夜、ワインを二本、ほぼ空けてしまい、久々に、ぐしゃぐしゃに潰れた。もう、完膚なきまでにめった打ちにされて死骸のようになった。翌朝、おそろしく空っぽの、すっきりとした気分で目が覚めて、はっとして、前夜の後半のことがほぼ完全に記憶から欠落していることを思って、起きたばかりの胸に深く暗い影が差すのを感じた。間違ってしまった夜。それを想像しながら、始まったばかりの翌日を悔恨の思いで過ごす。その痛みを、今日は耐える日なのだった。口の中を切って血の味を感じるかのように、罪悪感が流れるのを味わいながら、なるべく静かに、自分をそっとしておきたいのであった。外はあいかわらずの、暑い真夏の日差しに満ちていた。

それでも午後からは出かける必要があった。DVDを返さないといけなかった。昨日あれほど酷い体たらくで立ち去ったあの駅に、あたかも犯行現場に戻る犯人のように、こんなに早く戻ることになるなんて。禍々しい気持ちのまま、電車に乗った。

借りたDVDは「崖の上のポニョ」で、久々に見てあらためて、なんという呪わしいムードに満ちた作品だろうと思って、ますます一層気が滅入った。ほんとうに、これは聞いてはいけない話、空けてはいけない箱、一度手にしたら最後もう二度と元には戻れないような、人間のいちばん蓋をしておきたい何かをあからさまにしてしまうような、そういうものに思えて、観終わったあとでも、目を瞑るとその恐怖感が冷たく湧いてくるのであった。

DVDを返して、本屋をちょっと見てたりして、気付くと巨大な入道雲の向こうが夕陽のピンク色に染まりかけていた。

ビールを飲んだ。外でビールを飲むのはひさしぶりだ。というか、ビールなんてこのシチュエーションでこうやって飲むのだけがうまいのではないか。それ以外で飲む必要があるのか。

暗くて、何か忌まわしさの影につきまとわれた週末だったけど、それも切り抜けて強くいきたい。