表す


いま、少しずつ北杜夫「楡家の人びと」を読んでおります。あと谷崎潤一郎細雪」も少しずつ読んでおります。何年か前に途中まで読んでそのままになっておりまして、もう忘れちゃったので、今になってまた最初から読んでいる次第でございまして、まことにすみません。


それにしても昨日観た「5つ数えれば君の夢」で宇佐美を慕う都の、おどろくべき愛の告白シーンには、じつに痺れた。すごい歪んだ愛の完成を夢見る、まるでナチの狂信者がヒトラーに直接語るかのような、狂った母親が子に語るような、忌まわしさ全開感がすばらしいのだが、でもこういうのも、もはや歴史的なのか。大奥でもいいし、没落貴族でもいいし、第三帝国司令部でもいいし、なんでもいいけど、すべては終わったことだからこそ、ここまでしないと今や表せないのか。


蚊に刺された。ので、蚊取り線香をつけた。マッチで火を付けるというのも最近はたまにしかやらないことで、鼻を突く匂いとともに燃える火がもの珍しいように思えて、木の軸を伝って火が指のすぐ先に来るまでいつまでも見ていようとする。