電車の座席に座って本を持ったまま、何時の間にか、まるで電池がきれてしまったかのように、ピタッとうごかなくなってしまう。眠ってしまっている。はっと気付いて周りを見て、いまどこの駅かを見る。目の前に女が立っている。座っている僕の目の前に、立ちふさがるようにしていて、首から上が視界から消えている。仮に首のない女だとしても、目の前にいるからかえって人間の実在感がある。やがてまた、ふいに意識をなくす。はっとしてまた起きる。首のない身体の障壁に隠れて、いつまでも寝ては起きて、いつまでも行ったり来たり不毛なくりかえしのなかにいる。