先週、風邪で寝込んで会社を二日休んだので全部で五連休したのだが、そんなに長く休んでた気がしない。たしかに二日は風邪でまったく身動きとれずだったが、それでもそれなりの、空白の時間の記憶だけでも残っているかというと、まったくない。その五日間自体がなかったかのようにさえ思える。もしかすると、歳をとってきて、過去の記憶の残り方がとてつもなく恣意的になっているのか、というか、単に少なくなってきているのだろうか。記憶がサンプリングされるのが、100時間のうち25時間くらいしかなかったとしたら、後の75時間は生きてなかったも同然ということになるのか。今日友人から忘年会の誘いのメールが来て、あれからもう一年経つのか、みたいな、ありふれたことを思いながら、いやでも、しかしいくらなんでも一年というのが早すぎる、という言葉自体が聞き飽きているが、その言葉の内容が更新されてないだけで、一年の内容はそれこそ猛烈な勢いでスピードアップしていて、その一年という時間の中で、過去の記憶として保存されている量が昔と較べると圧倒的に少なく、だから一ヶ月か二ヶ月程度で、あっというまに季節が変わってしまって、そのまま一年が一巡してしまう。もうこれだと、もともと思ってた自分など、毎度失くしてしまった方が、むしろ活き活きとやっていけるのかもしれない。そもそも忘年会なんていう言葉がすでに皮肉にしかなってないというか、忘れるべきことを思い出せないというか、だいたい、一年という単位で、今年はどうだったとか考えてもしょうがないような感じになってきた。十年前だと、一年の印象はけっこうしっかりとあるし、僕は意外と、年月ごとに自分が何をしてたかとか、仕事でも何でも、比較的細かく覚えているのがすきというか、メモしておくようなところがあるタイプの人間で、だからたとえば2004年はこうだったとか、1998年はこんな感じだったとか、1988年はこうで、前年の86年はああいう感じ、とか、そういうのが年代ごとに、ぼやっと自分の記憶が浮かんできたりするのだが、いまや、そんな単位ではとても記憶を乗せることは不可能という感じ。2010〜2012、みたいな括りで、どうにかその頃の記憶と同分量程度な気がする。