ストーリー・オブ・マイライフ

Amazon Primeグレタ・ガーウィグ「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(2019)を観る。僕は原作は未読だが「若草物語」そのものというよりも、おそらくは原作のエピソードと登場人物の娘たちが実家を出てからのエピソードとが巧みに混ぜ合わされているのだろう。物語やその背景や各登場人物の造形はすごくふつうというか、南北戦争時代のアメリカが舞台で風景や衣装はよく出来ているが、その時代っぽい手触り感は控えめで、姉妹や周辺の人間関係を中心にまとめられたわかりやすいドラマで、しかしふたつの時間がかなり目まぐるしく切り替わりながら平行して描かれていく。語り方というか話の運び方がすごく現代ドラマ的というか洗練されている感じ。

印象的なのは次女ジョーを演じるシアーシャ・ローナンのやけに頼もしい雰囲気。伯母役はメリル・ストリープで、伯母とジョーは、ものの考え方的は正反対というか、旧来型である伯母に対してジョーが来たるべき新たな女性像イメージを背負っているのだろうけど、シアーシャ・ローナンの堂々とした顔を見ているうちに、この人は母親よりもむしろ伯母の方に近づいていくんじゃなかろうかと、このまま行くとシアーシャ・ローナンも早々にメリル・ストリープみたいになってしまいそうだ。

まあ、ローラ・ダーン演じる母親が、あまりにもものわかりの良い、如何にも進歩的かつ柔和な母親に過ぎるところもあるし、女の幸福は金持ちの男との結婚というのが伯母の信条で、ジョーは(色々あったけど)独身で生きることを選び、著作権や印税率についても出版社相手に堂々交渉するような小説家としての自立を目指すわけで、たしかに両者の方向性は違えど、ぼんやりしてるだけではダメよ!みたいな、よりしぶとく生存しようと欲する意志のような何かを見て、、そこに似たものが感じられたのだろうか。

しかし死んでしまう三女はもとより、長女や四女の描かれ方も、何となくちょっと可哀そうな感じもするし、男たちは誰もが皆、どことなく不思議な頼りなさを漂わせているようだし、この物語自体が、登場人物に対してすこし辛辣な感じがするのは気のせいか。(こういう感じを「女性的」ととらえてはいけないのかもしれないけど、そう言いたくなる感じは受ける。)