好きな食べ物を、何度でも何度でも食べるたとえばこの僕は、あれはいったい、何を味わっているのだろうか。ああ、同じだ、やっぱり同じだ、というのを、確かめているのだろうか。それとも、ああ、おいしい、なんておいしいのか、と驚いている?美味しいというのは、サプライズ体験で、何度でも初めてのように驚いているのか。その好き、が、どのくらいの好きなのかは、本人、わからないものだ。もしかしたら、急に、興味をうしなう日が来るだろうか。そんな気もする今日この頃だ。でもいずれ、忘れるから、また食べるのか?もう、たとえば最近はあまり食べたいと思わないものでも、いま食べたら、やはりうまいだろうか。昔より味が落ちたとか、そんな話はどうでもいいが、たぶん、食べたら、おいしくなかったということはなくて、もっと根本的に驚いているかどうかの問題であるはずだが、だからそれで、どこにも行けない。百年前、死を悟って、早く!デザートを持ってきて!と呼びかけて絶命した婦人がいたらしいが、まさに、そういう流れだ。