昨日は、シネマート新宿でホン・サンス「ソニはご機嫌ななめ」を観る。やっぱりヘンなカメラの寄りの動き。本当に、なんなのよこれは。そして同じ音楽が二回も三回も同じように流れるし、ほんとうに苛々する。もういいよ、と言いたくなるくらい、何度も何度もどうでもいい会話が延々続く。ほとんどの観客が、最初は笑い声も聞かれるけど後半はまったく静まり返って、笑いもかすかに聞こえるくらいで、あちこちからいびきも聞こえる。そりゃ、あれだけ他人のどうでもいい話をえんえん聞かされたら眠くもなるだろうよ。隣の爺さんなんか、ほとんど眠っていて、起きてからトイレか何かで席を立って、やがて戻ってきたらその後5分くらいで映画が終わってしまったので、ほとんど何しに来たのかわからない人になっていたし。


しかし主人公を演じるチョン・ユミがあまりにも可愛すぎた。そしてほんとうに徹底的に罵倒したくなるくらい、相変わらず登場人物全員がばかなのだが、この作品はもう一回観てもいい。やや気に入った。思い出し笑いが止まらない。


ホン・サンス作品の登場人物は皆じつに酒好きなのだが、しかし酒をおいしそうに飲むわけではなくて、むしろ苛々と急ぐようにじれったいように、(グラスではなく)コップにボトルの口をガツンとぶつけて勢いよく注いで、注ぎ終わると瓶をドンと音高くテーブルに立てて、それで乾杯と言いあって乱暴にコップをぶつけ合って、音もたてずに飲んで、ふーっとため息をつく。男も女も関係なくこの態度だ。そして最後はだらだらに酔っ払って、死ぬほどどうでもいい会話が延々と続く。


しかし、まあ本作はなかなかよかった。今思い出してもニヤニヤとにやけてくるくらいには面白い。っていうか、ばかすぎる、みんな。


どの作品もそうだが、急に凄くきれいなショットが差し挟まれるのはいったい何なのか?ベンチに座って推薦状を読んでるチョン・ユミの横からのショットとかもそうだし、あとやはり常に気合が入ってるのはキスシーンである。気合というか、そこだけいきなり別の文脈から突如サンプリングされたみたいにきれいになる。


本作は今まで観たなかでは意外なほど話の筋が通っているというか、オチがあるような感じではあるが、でもそれがさほど、どうということもない。しかし、チョン・ユミは魅力的すぎた。


あと、なんでいつも、ホン・サンス作品の飲み屋は最初に店主が居なかったり、ヘンな注文ばっかりさせられたり、まともな店が一軒もないのか。