Brad Mehldau Trio の Art Of The Trio Vol.4: Back At The Vanguard


一曲目のAll The Things You Areのことですけどね。


1999年リリースのアルバム。当時、まだ上野に存在していたdisk unionのJAZZフロアで買った。


あの頃は良かった。とは言わないけど、少なくとも今とは違った。まあ、上野で色々買えたわけだから、今よりは全然良かった。CISCOもあったし、HMVもあった。今は全滅だからね。


まあ、でもそんなことはどうでもいい。Art Of The Trio Vol.4。一曲目。すごい。ごりごり。ばきばきの、ごきごき。


レッドツェッペリンとか、ブラックサバスとか、好きな人に薦めたい。あるいは、なんかもはや音楽じゃないよくわからないヘンな集団演舞的な何かとか。


いや、むかしからジャズって要するにこうで、こういう、どかどかばたばたとやって、それでなんぼの世界で、その意味でこれは、これさえ聴いてればもういいじゃんという話でもある。


これねえ。すごいね。まじですごい。


でもその後で、Bill Evans TrioのVillage Vanguardの、Solarを聴いたら、これはこれで、やっぱり、ちょっと酷いといいたくなるような…。


ベースの、Scott LaFaro。あまりにも、自由。歌うような、ほとんど演奏を放棄しているかのような、あとで先生に怒られるんじゃないかと思われるような。


クリームの、Jack Bruceだな。それはすごくよくわかる。あからさまに、そう。


フレーズが、とか、あの曲が、とか、そういうのではなくて、この瞬間に、それで行っていい、これで行け!という判断を、Jack Bruceは、Scott LaFaroから教わっている。完全に、その弟子として振舞っている。その意味において、自分が、プレイヤーとして、全責任を背負い、あらゆる批判に耐える覚悟をきめているといっても良い。Scott LaFaroの名の下に、彼は自分のプレイを信じている。


Jack Bruceの、ソロになってからのレコードは、ものにもよるけど、派手なもの以外は、キップ・ハンラハンとの作品とか。実に内省的な感じがある。そこがおもしろい。ばきばきと器楽的に音を埋め尽くしてしまうのではなく、自分のやれることをちょっと冷静に、あるいは悲観的に、距離をもって見返しているような感じがある。…いやいや、でもJack Bruceのソロ以降なんて、ずいぶんしばらくのあいだ、聴いてないのに、あまりいいかげんなことは言えないけど。


ベースね。ベース。バカバカしいけど、音楽の。ベース。まるでポップアートみたいだ。まあ、ベースっていう楽器自体、とても面白いのだろうね。こんな奇妙な楽器も珍しい。一人で弾いてても、ちっとも面白くないのに。最初から友達ができると思えなければ、手を出せないはずだが。