モノとモノの間には、かならず窪みが出来ていて、その凹んだ部分が影になっている。本棚の窪みの影になったくらいところを見ながら育った。お店に行くとお菓子が並んでいて、箱と箱の間にもやはり灰色の窪みがある。プラモデルの箱と箱の間にもだ。スイミングスクールのプール脇に設置された小物入れもそうだった。ボツボツとしたものの陰のところを掻き毟って平坦にしたいと思ったのだが、それはできない相談であった。今となっては、もう全く見境なしに、ぼつぼつとしたものに囲まれた生活を送っているが、それでも完全に平坦な世界に生きることを、今の自分は、もうあきらめてしまったのか?というと、そうだと断言することもできない。まだあきらめきれないところがある。