岸辺の旅


MOVIX亀有で「岸辺の旅」を観る。主人公である深津絵里の主観的世界がずっと描かれているようでもあるが、幽霊的存在をこの私がどのくらい許し、他人がどのくらい許すのか、その他人を、この私がさらにどのくらい許すのか、という、許容にまつわる話だと思った。


とにかく、前提として他人に干渉しないし、干渉できないし、その暗闇を。。が、おそらく黒沢清的な倫理観なのだと思う。その、慎ましさこそが「共感」のポイントだとも思う。僕も、それでいいと思っているので、むしろ終盤のジタバタする幽霊の下りなんかは、必要ないんじゃないかとさえ思ってしまうのだが、でもまあ、やっぱり、それはそれですか。それしかないですしね、みたいな感じもする。とにかく本物の暗闇というか、黒が出てくる。それを観に来ているのだ、と言ってもいい。


おそらく、死人が出てくることの単純な喜びが強いのだが、死人、つまり、他人であり私の了解事項、が、ふと終わってしまうことの、最初からわかっているからこその哀しみというか、消えゆく感傷というか、いや実際僕なんかもリアルに、そういうことは昔から考えますよ、二人暮らしだし、とか。ほんとうに、幽霊と、暮らすって現実に行われてることだと言われても不思議じゃない。


蒼井優のような人の登場も、まあ、こんな心無い人物を出すか、と驚いてしまうのだが、でも表情一発で、たしかにすごくいいとは思うが。


とにかく、喪失という、親も死んでパートナーも死んで、、天涯孤独といういずれ誰もがそうなる境地がテーマで、とはいえあまりそういうテーマ自体への拘泥は希薄で、しかし、となると余計に厳しい世の中だなあと思う。


深津さん。一人で、この後の人生がどんなものになるのでしょうかね。