くらい夢


未明から朝方にかけて、いつまでもとりとめなく夢を見ていた。けっこう不吉な、けして楽しい内容ではなかったのだけれども、それでも夢は見終わって目がさめると、どうしてただちにまたすぐに同じ場所に戻って、さっきの続きを見たく思うのか。不吉さも暗さもぜんぶが自分自身から出た胎内的ななつかしさに染まっている。


病院で、中学生のときの友人と久々に再会した。友人はベッドから数十センチ浮かんだ状態で、天井からうつ伏せの格好で何本ものワイヤーに吊り下げられたまま、頭をこちらに持ち上げて僕を見ている。その胸、腹、腕は火傷か何かの、大きな傷跡が、ひどく痛ましく、まだら状に広がっている。友人は、体が良くなったら今度、あらため二人でメシでも食おうと言うので、僕もうんうんと頷くが、この重症で、一体いつになったら快復するのかと、不安に思う。その後、場面が飛んで、コマ送り状態になって、同じ友人がすでに路上に立っていて、僕と並んで歩いているようなイメージが、ふいに浮かぶ。しかし相手の表情は暗くて、そもそもその人相が、短く刈り込んだ髪とキツイ目つきの、昔の記憶にあるその友人の面影の全く感じられない印象で、ちょっと、あまりにも雰囲気が変わってしまった。たぶん会うのが、遅すぎたのだ。


ぼんやりと歩いていて、大通りから裏路地に入って、ビルとビルの間の狭い隙間から、大きな建物の裏口に入って、蛍光灯一本分の光に照らされた、薄暗くて雑然とした狭い廊下を通り抜けて行く。歩いているうちに、そこが大学の構内だということがわかる。こんな行き方もあるのかと思う。事務局の窓口の男性がこちらに気付いて、内側にかかっていた鍵を開けてくれて、校舎から出て、無人の広場に立つ。夜の暗闇と肌寒さに包まれる。さっきの事務員、僕がもうすでにここの学生じゃないことに気付いているのだろうかと思う。


ふと足元を見ると、他人の靴を履いていることに気付いた。いつ履き間違えたのか、そもそも靴を履き直した記憶なんて無いのだけれども。明るい茶色のローファー。こういう靴は、僕なら絶対に買わない。どう見ても僕の靴ではないと思う。見慣れない形の靴、その余所余所しさがそのまま、他人の親しみ、他人の堆積された時間をありありと現しているようだ。しかしこの靴、なぜこんなにサイズが自分の足にぴったり合うのか。あまりにもジャストフィットなので、それがかえって違和感を高めて、他人の履物だということが強く意識される。来た道を引返して、さっきの事務員に事情を話して、靴を返そうか。でも、返したとして、自分の靴がその場所にあるのかわからないし、まさか裸足で帰るわけにも行かないし、どうすればいいのか。どうすればいいと思いますか?