バード


クリント・イーストウッドの「バード」を(妻が借りてきたので)DVDで観る。僕はずいぶん前に観たときは、やけに冗長でそんなに面白くなかったような記憶があったのだが、今日久々に観たら、まあ、やはり同じような感じの印象だったが、でも結局ずーっと観てしまうのだから、つまらなくはないのかもしれない。とにかく二時間半以上、薬とアルコールに塗れた典型的破滅型ミュージシャンの心身共に生きている事そのものが苦痛みたいな感じと、クールな奥さんの悲哀を通り抜けた諦念を感じさせる表情ややり取りがひたすら続き、その甘い感傷に流れないドライな感じはかなり良くて、回想から回想へ、ずるずると彷徨うような展開も、ちょっと一昔前な映画という感じではあるが、描くべきことをただ淡々と描くだけの描き方もけっこう良いとは思うが、でも面白いというわけでもないので、そのまま観続けていて、しまいにはこちらの体調までどんどん悪くなってしまいそうな、なんとも重苦しい印象。どのシーンも画面がかなり暗いというのも、そう思う原因かもしれないが。…ただしかし、やはり音楽は良いのだ。オープニングの「レスター・リープス・イン」は何度聴いても惚れ惚れする。ラヴァー・マンもローラもクール・ブルースも素晴らしくカッコいい。まあ個人的に、何十年も前にこの映画のサントラをさんざん聴いたから、未だにどの曲もよくおぼえているのだ。これを聴くと、ほんとうに、大学生の頃の時間がありありとよみがえってくるかのようだ。