PSVR


年始の挨拶で妻の実家へ。義兄が何やらたくさん抱えてきてテレビの前にどさっと降ろしたと思ったら、PlayStation VRではないか。わー、すごい。


ヘッドセットとヘッドフォンを装着する。真っ暗闇から、ぼわっと視界が明るくなり、メニュー画面があらわれて、おお、、と驚く。まさに、空間。頭を動かして周囲を見渡す。上下前後左右に、石畳の空間が広がっていて、その真ん中に自分がいる、ということになる。空間の広がりがあって、光の量(薄暗さ)というものがある。それだけのことが、これほど強烈な感覚だとは。コントローラーが宙に浮かんでいて、それが近づいてきて、義兄が僕に実際のコントローラーを手渡した瞬間の、感覚の微妙なずれと共に、視界上のコントローラーを握る。


ざっとやらせてもらったのは、海底を体験するやつと、スターウォーズのXウィングに乗って戦闘するやつと、アップダウンの激しいコースを走るレーシングゲーム。ゲームとしては、どれもふつうななのだが、正直これは、コントローラーを操作するのも面倒くさいというか、単に、ぼけーっと周囲を見渡していたいだけだし、そのことが楽しみの最たるものである。籠の中に入って海底を降りていくときの、足下に広がる暗闇の底知れなさは高所恐怖を感じるに充分だし(しかし、見下ろしても自分の身体は見えない、身体が消失しているという感じ。)スターウォーズのタイトル画面でスノーウォーカーがのしのしと巨体を揺らしながら自分の真上を歩き去っていくのを「見上げる」というのは、まさに驚くべき視覚体験で、目の前のXウィングの機体に近づいていき、コクピットを見下ろし、シートと計器類を眺め、やがてそのコクピットに乗り込み(見下ろすと操縦かんを握るパイロットの体は見える。頭だけが、自分になっている。後ろを振り返ると、ちゃんとR2-D2もいる。)、周囲を光るパネル類に囲まれ、カウル越しに外の景色を見るという、ほとんど子供の頃の夢が、ついに現実になってしまったという感慨を起させるに充分なものである。子供の頃の夢というか、子供の頃に眠っていて見た夢を、何十年後かの現実で再見したような感じか。宇宙に出てからの景色もすごい。自分の真横を、巨大な宇宙船がゆっくりと進んでいくのを見ている感じは、海の上ででかい客船がゆっくりと遠ざかっていくのを見ているのと同じ感覚で、正直、敵機が来襲してシューティングゲームになってしまうと、ふつうのゲームな要素が強くなるので、その直前の、ゆっくりと変容する景色を、いつまでも静かに味わっていたい。どのゲームコンテンツもグラフィックの質はべつにそれほどでもなくて、静止画的なリアルさはさほどでもないのだが、それでも疑似体験の質としては前代未聞だ。これは、内容によっては、仕事が終わったらもうずーっとこれを着けていたいと思う人がいてもおかしくなさそうだ。まあ、とはいえある程度やったら、けっこうすぐ慣れてしまうかもしれない、とも思うが。まあこれは、まさにコンテンツ次第だろう。可能性の深堀りは、まだまだこれからだろうな。