同胞


じつはジムのプールで泳ぐにも社会性が必要。毎日のように泳いでいると、同じ時間にそこに集う人を、なんとなくわかってくる。25メートルのコースがいくつかのコースロープで区切られていて、そのうち一つか二つが「ある程度止まらずに泳ぐ方用」コースで、もうひとつかふたつ「25メートルずつ泳ぐ方用」コースで、いずれも住人はある程度固定メンバーと化している。空いてるときは、コースに自分ひとりしかいないこともわりとあるし、多くても一コースあたり三人とかそのくらいだ。とはいえ、それでも一人でないならそれなりに相手に気を使う。べつに勝手にやっててもいいけど、一応お互い気をつかい合いましょうみたいな方がいい。結局、通勤電車とか公道を運転するときと一緒である。まあ、当然といえば当然だ。マナーとかルールって要するにマナーやルールを意識してますよアピールをすればいいだけで、立ち飲み屋ですらそうだからな。まあ人間はもともとそういう生き物なのだ。唐突なようだけれども、今後の世の中、このままどんどん状況が悪くなったら、彼らと共闘することも想像しておこう。公共の場からはじまる大きな社会変革のチャンスが、あるのかもしれない。フィットネスクラブのロングコースで泳いでた人たち、速い人もいれば遅い人もいましたけど、じつは彼らも組織なんです。ええ、一枚岩なんですよ。互いに無言で、何のやり取りもなさそうに見えますけれども、あれで彼らは、夜になると命がけで、血を流しながら、互いを深め合っているんです。