昨日の午前中、音をミュートにしてテレビのチャンネルを変えていたら、テレンス・マリックの「シン・レッド・ライン」が放送されていて、無音状態でしばらくみていた。


思わずため息が漏れるような映像である。風に波打つ草原、森林の緑色、葉と葉の隙間からこぼれる光と影の明滅、雲間に太陽が隠れていくときの、明るさがゆっくりと後退していく時間、またしばらくして、さっと明るさが戻ってきてからの時間、虫や動物たちの活動する時間、そして信じられないくらいの晴れ渡った青空のその青さと、雲の白さ。雲は、ほとんど発光体みたいだ。たぶんもはやこれは、この光の中にいられるだけで、すでに恩寵そのものだ。無音で映像だけを見ている限り、カメラはその光の歓喜だけを、じっくりといつまでも捉えようとしているだけという感じがする。しかしその地面ではずーっと泥まみれで人々が戦争していて、それとこれとが分かれているというか、別々に捉えられているかのようで、まあこれは、やっぱりなかなか凄い作品だなと思いながら、ほとんど呆れたような思いでしばらく画面を見ていた。そのあと出掛けたので、見てたのはせいぜい30分足らずだったと思うが。