WONK


先日、新潮に載っていた福田和也による澤口知之の追悼文を読んだ。福田和也の文章読むの、久しぶりだと思った。いや、最近「大宰相・原敬」とか読んだので、久しぶりではないのだが、最近書かれたものを読むのが、久しぶりだということ。それで調べたら、新潮の2016年に載っていた、それこそ澤口知之とのやり取りを書いた文章は、そのとき読んでいたが、その後2017年7月の「三浦朱門の『箱庭』」というのは未読だったので、図書館に行って読んだら、驚いたことに父親が倒れて云々…みたいな内容だったので、自分の現状との妙なシンクロ感を感じて不気味な思いを味わう。まあ、自分もそういう年齢になってきて、親も高齢化するわけだから、そんなのは世間一般、別にいくらでもありうるというか、いくらでもシンクロするような話題に過ぎないというのはわかってはいるが。それにしても、、と思った。


根津で早めにちょっと食べて呑んで、その後渋谷へ移動。WWW XでWONKワンマン。この会場にははじめて来たが、ここって、つまり旧シネマライズなのだ。そうでしたね。このあたりに来るのも相当久々だ。WONKはたしか3月代官山、7月新代田でライブを観たが、おそらく今日は今まででもっとも完成度高い内容が見られるのではないかと予想していたが、果たしてその通りでじつに素晴らしいパフォーマンス。これまでの集大成的というか、フロアは満員、過去曲からバランス良く選曲されて、ゲストもたくさん出て、最後はやたら盛り上がって、アンコールがいつまでも終わらないみたいな、皆ほんとうにありがとうみたいな状態で、明らかに上昇気流に乗ってる人達という感じで、その勢いもろ共たいへん素晴らしかった。


WONKはソウルなんだけれどもベタっと情緒的なところはあまりなくて、ボーカルの淡白さとか演奏のクールさとかが特長というか、しかしその言い方もちょっと違っていて、淡白だけれどもある意味個性的なボーカルだし、演奏もそうだ。さらーっとしたスムーズさで、とくに最新アルバムでその傾向が強まったけれども、あるちょっとしたニュアンスというか、ある種の些細な箇所にWONKならではな感じがある。J DillaとかD'AngeloとかErykah Baduとかをカバーしたり、初期はかなりグラスパー的だったり、如何にもそういうイメージではあるが、けっこう聴いているうちに、そういうことではない特有のニュアンス、特有の何かが、このバンドにはあるなあと感じるようになってきた。それが今後、もっとぐいぐいと明確で濃厚になってくると、さらに凄いグループになっていくのだろうな、と。しかしボーカルの人、髪をツーブロックにして、遠めに見た感じものすごくイケメンなヒットラーみたいになってしまった…。


各メンバー+ゲストのソロセットな時間もふんだんに用意されていて、そういうインストゥルメンタルな時間は完全にジャズなバンドになり、歌のときはカッコいいソウルになって、最後はみんなで歌って盛り上がる的な展開も可能で、そしてやはりどの曲も、なかなか良いので和むし、気持ちいい。はじめて観たときの、得体の知れない謎の迫力みたいなものは薄れたというか自分が慣れてしまったのかもしれず、あまり感じられなくなったが、今のままもっとどこまでも大きく広がっていったらいいだろうなと思った。