寒い朝、いよいよ来た。座っていると、冷気がゆっくりと足元からしのびよってきて、ドアを開けて廊下に出ると、全身のあちこちの隙間から体温が逃げていくのがわかって、歩くのがおぼつかなくなるくらいのたよりなさを感じたり、そんな防戦一方の、朝から晩までひたすら身を固くして災難をやり過ごすしかないという態度に終始するだけの時節にきた。


男が四人、忘年会のため神保町に集まる。この面子で会うのは一年半ぶりだが、皆さん変わり映え無さ過ぎ、仕事、結婚、引越しなどこの一年での変化一切無し。そういうことも、考えなくもないけど、結局今年も動かず来年も今年と一緒じゃないですかね、あの店のラーメンは今でも好きですね、俺やだよあの店、うちの会社の人にしょっちゅう会うし、大切にしたいことややるべきことがあるのはわかっているけど、なぜかあのラーメンほど夢中にはなれないですね、考えてみたらもう、十年近く食べてる、そうなの?それはそれで、すごいな、まあ、それでぜんぜん問題ないのだけれども、近況を知りたがるのは、変わり映えのしない、さえない面をただつき合わせていて、つまらなくはないけどそれなりに手持ち無沙汰で、食べ尽くした鍋の底をかきまぜるみたいに、無い話題を探っているだけのことなのだが、退屈をもてあました風にも見える小津映画の佐分利信みたいに「なあ君、さいきんどうなんだ、誰かいい相手でもいないの」などと、ついつぶやきたくなるだけなのだが。