山の上のカシノキは、遠くの国へ行きたいと、空行く雲に頼んだが、雲はどこかへ消えてしまった
山の上のカシノキは、私と一緒に暮らしてと、やさしい風に頼んだが、風もやはり、消えてしまった
望みはかなわず、年月は過ぎ、
山の上のカシノキは、今ではすっかり年を取り、ほほえみながら立っている
寂しいことに、慣れてしまった
そんなにいい歌かね?
そうかなあ、僕はあまり、そうは思わないが・・・。わからなくはないが
下らないことを言うようだけれども、今ならさしずめ、それはカシノキの自己責任、とか何とか、したり顔でうそぶく手合いも多そうだけどな、たしかに、そんな連中と同じ空気を吸うのはイヤだな、できるだけ遠くに離れたい気持ちには賛成だけどな
こことは違う、まるで別の場所で、寂しいことに慣れてしまった人を、ぼんやりと好きに思いながら暮らすほうが、よっぽどいいかもしれないけどな
そうやって、みんながバラバラなままで、今ではすっかり、寂しいことに慣れてしまったとしても、そのほうが、まだマシかもしれないとは思うけどな