高校

妹からメールが来て、姪が何かのテストだか検定試験だかを受けたとき、その会場がたまたま僕の母校の高校だったそうな。僕が高校を卒業したのは三十年以上前である。その数年後に、同校で教育実習をやった。面白かったのは、自分が卒業したときはまだ男子校だったのに、教育実習で訪れたら男女共学になっていたのだ。だからその時点で自分が高校生だった頃の感じとは微妙に違っていた。が、そのときの学生たちの感じが、ああこの高校の生徒ってこうなんだな…、もしかすると自分も含めて、この子たちは誰も彼も彼女もみな同じように、ある傾向というか雰囲気をまとった、そういう人たちなのかもしれないな、とかすかに感じた。

あれ以来、高校へは行ってない。駅に降りたことさえない。駅から歩いて、途中にあった本屋だのパン屋だのラーメン屋だのが、今もあるとはさすがに思えないし、あの商店街そのものもすっかり消えてしまっただろうとも思う。駅前だって変わってしまっただろう。ところが今はグーグルマップがあるので、最近の駅前だの高校への道のりだのがどんな感じなのかは、写真でわかるわけだ。便利というか味気ないというか、まあ便利だし話が早くていいのかもしれないが、とりいそぎ駅前の写真を見てみた。そしたらたしかに、今風の駅の外観に変わってはいるようだが、記憶の印象と大きな違いはないというか、きっと乗降客数が昔も今も大したことない小さな駅なので、見た目や構造がことさら大きく変わってしまうようなこともなかったみたいだ。駅前も相変わらず閑散としていて、ほぼ三十年前と一緒といえば一緒だ。

こんなものかと思う。で、これ以上ほかの写真を見るのが面倒くさくなってそれだけでグーグルマップは閉じてしまう。それでもまだ思い出したい気持ちはなくなってない。あの駅のホーム、あのベンチ、あの立ち食いソバ屋の前、あの階段を降りたとき眼前に広がる景色。それをまた歩きたいとは思うし、グーグルマップには写らないものを求めて、というわけではないけど、べつに何かに期待するわけでもなく、目的もなく、ただの散歩みたいにあの駅に降り立って、高校周辺をふらついてみようかなとも思う。でも思うだけだろう、さすがに実際にはしないと思う。