休戦の気分


「休戦」が面白い。この一週間かそこら、猛烈に寒いわ、指は痛むは、仕事はばたばたするわ一瞬ひやひやするわで、落ち着き無い日々だが、結局のところ、気分の主調はほぼすべてプリーモ・レーヴィ「休戦」に描かれている世界に囚われきっていると言って良い。今のところは僕はどちらかと言えば、本を読んでいるときのあの世界を中心にして生きており、そうではないこの現実はつけたしというか、この現実で起こることは本を読んでいる気分に色添えをする程度のこととしてしか記憶の領域を使用してない感じだ。「休戦」はほとんど天国的というか、地獄も天国もあまり変わらないというか、笑いというのはこんな場所にも植物が生息するのかという驚きに似た感じで沸き起こってくるものだなというか、痛いとか苦しいとか腹減ったとかそれで埋め尽くされた時間のほんの隙間にあらわれているのがこの世界で、だとしたら書くとは本来書かれるべきことの隙間部分を利用することによってしか可能ではないのかもしれないなというか、いずれにせよもう残りあと百ページ弱しかないので、なんとなく惜しい気になっているのだが、もちろんこんなひどい時間はいっこくも早く終ってほしいとか、思ってもないことを思っているように書いたりもする。実際、読んでいるときはほぼ何も考えてない。