脳神経科


じつは数日前から軽い頭痛が続いていて、痛み自体は大したことないのだけれども、それでもやはり気にはなり、時間帯や姿勢や動作よっても感じる痛みが異なり、なんだかふわっとした痛みの帽子をかぶっているような、それで昨日の午後など一瞬軽くめまいを感じたりもして、一応念のために病院行っておくかと思って診療開始時間が早めな病院をネットで探して、今朝の出勤前にその脳神経科の病院へ行った。ウェブの情報から予想できたとおり、というよりウェブに情報がほとんど無かったことから予想できたとおり、ちょっと古めかしい雰囲気の昔ながらの病院で、殺風景な階段を上って受付と書かれた愛想のないドアを開けると一応それらしい小さな待合室になっていて、白衣の女性が座っている窓口に、あのーすいません、初診でお願いしますと言って、ご紹介とかじゃなくて、初診ですね、では保険証下さいと言われて、差し出された問診表を書く。あてはまるものとして「頭」に○をして、「痛み」「ぼんやりする」「めまい」に○をして、この病院をどこで知りましたか?の箇所では「インターネット」に○をした。問診表を渡すと、すぐに診察はじまると思いますから少しお待ち下さいねと言われた。


しばらくして奥の部屋から、へえ!この人、足立区からここまで通ってる人かねー?と、問診表の住所を見たのであろう男性の大きな声が聞こえた。たぶん僕を気にかけて、窓口の女性は反応しない。やがて名前を呼ばれた。かなり高齢な先生だったが、元気がよくて快活な感じ。足立区!なんでまたそんな遠いところから!通勤ねえ!大変ですわなあ!どちらご出身!?そうなの!横浜じゃないんですなあ!など他にもほとんど治療に関係なさそうな世間話をたくさん交えつつ色々質問されて答えて、上下左右を向いたり、舌を出したり目を覗かれたり、立って歩いてみせたり片足で立ったりして、ぜんぜん異常なさそうですなあ!首のレントゲンと脳CTやろうか!と言われて、下のフロアで壁に立ったり寝台に寝そべったりして、全部で三十分くらい、はい終わりです!と言われて、モニタ上の頭部の輪切りのX線写真をコマ送りで見せられた。カクカクとした動きで、目玉二つと脳があって、その断面が中心部に向かって移動していき、副鼻腔、クモ膜下、中耳、脳に入って、海馬、小脳、脳幹と抜けていって、いずれも異常なしだね!普通の正常な脳が写ってるだけだね!と言われて、はあそうでしたか、じゃあ良かったですと言って、診察が終わった。喋りだけ聞いてると適当な診察みたいな感じもするが、傍らに立っている二人の看護師の動きが異常にテキパキとしていて、先生の喋ることをほとんど先読みしているかの如き動作で器具を取ったり照明を暗くしたり明るくしたりモノの配置を変えたりと、一々の対応に熟練が感じられた。CTで異常なしだという結果さえわかればとりあえず充分なので、それで満足である。とはいえまだ、痛みはあるけど、まあ無視しようと思えば可能な程度だし、結局原因はわからないというか、世間で頭痛に悩んでいる人はものすごくたくさんいるけど、僕もここ数日でその枠内に少し入ってしまった、ということだ。ねがわくば、可能であれば、入るのは今回限りで、なるべく早いうちに枠外へ離脱したいが。