Richard Diebenkorn


部屋のソファーに寝そべって、背後の書棚に適当に手を伸ばして、たまたま取り出したリチャード・ディーベンコーンの画集を久々にぱらぱらと見て、あまりにも良いのでやや狼狽し、座り直して改めてじっくりとページを繰る。ああアメリカの美術の、これが最良の成果ではないかとさえ思う。アメリカの、都心ではなくて郊外の、そこに生成してしまった風景・環境・空間・空気・時間が、それまでの美術の過去と接合してうまれた作品群がこれらではないのかと思う。絵の具の質、オイルに含有される成分までが、ぜんぶアメリカ製なのではないかとすら思ってしまう。そんなことはないのだろうけど、結果はそうなっているとしか思えない。アメリカ的だからその絵を良い、と言ってるわけではないのだが、その絵が良いのは確実であって、その中にアメリカが分かちがたく溶け込んでいるという感じがする。