ツイン・ピークス


午前中ツタヤに行って、ストッパー外して、スーパーでちょっと買い物してすぐ帰ってくる。「ツイン・ピークス リミテッド・イベント・シリーズ」DVDを観始めたのは正午過ぎからで、とりあえず今日はここまでと鑑賞を終えたときは23時というとんでもないロングラン鑑賞になってしまった。DVDの五枚目つまり十話まで観たので、残るはあと四枚。いちど観始めてしまうとこうなる可能性は高い。しかし十時間もぶっ続けだと最初の方をどうしても思い出せなくなる。思い出せることもあるけど、絶対忘れてしまっただろうなと感じる部分も多い。長いようであっという間でほんとうに十話も観たのかしらと訝しく感じたりもする。画面を観ながら、これまでのすべてが自分の過去の思い出みたいになってくる。前半出てた人が久しぶりに出てくると嬉しく思う。FBIの人たちのパートはおおむね楽しい。リンチ自身が声のでかい、とてもいい感じの役をやってる。FBIの女性捜査官はかなり魅力的だが、あれはクリスタ・ベルというリンチお気に入りの歌手のカメオ出演らしい。


しかし、今更ながら本当に幼稚な、被害妄想をそのまま肥大化させたような、人を見た目だけでこうだと決め付けて、女は常に誘惑的で、男女はすきあらば抱き合うし、悪いやつはどこまでも徹底的に邪悪で芯から腐りきっていて、残虐さや汚わいや不潔やグロテスクが好きで、荒廃した郊外、貧困、治安は最悪で、鬱屈と暴力に魅了されていて、ほんとうにどうしようもない、陰鬱で、意味不明で、煮え切らない笑いと残虐な描写に満ちていて、しかしゆったりとしたテンポで、おだやかに、と言いたいくらいの雰囲気で作品が進んでいく。そして、それを観るのを途中でやめられない。


登場人物たちは、とにかく何かを見ている。人と人、あるいは人とモノとの、切替しの映像をいったい何百回何千回見させられるのかと思うほどだ。何十秒もじーっと、思わせぶりに、何かを感じさせるように、ひたすらそれ。それを見ている表情。またそれ。そこまでやるからには、何かがあるだろうと思うが、とくに何もない。驚愕の表情、しかし本当に驚愕しているのか、かすかに疑いたくなるような何か。妙に間延びした時間、やり取りそのもののぎこちなさ、しかし、やはり何もない。ジーっと二、三人でその場に居て、何か言いたいわけでもなく気まずさに耐えてるわけでもなく、ただの一分くらいの時間がだらーっと出てきたり、そんなシーンがひたすら続く。しかし全体的にはとても親しみやすい、気軽に観ていられるような雰囲気に満ちてもいる。笑うところも多い。しかし、笑ってていいのかと思ってしまいもする。もはや細かい事をくどくど言っても仕方がないような、もはや誰にも止められない突き詰めきったパワーで構築されているのは感じる。これは徹底的であることにおいて比類ないものの一つであることはたしかだ。もはや黙って身をゆだねるしかないという感じだ。