ふたたび、それから

ホン・サンス「それから」をDVDで再見。去年の夏にはじめて観たときの驚きは今でも忘れられない。鮮やかとしか言いようのない、完璧な作品という印象で、それは再見の今回でも変わらないのだが、ただし初体験でないことでインパクトは減った。それってつまりネタバレされると魅力が薄まる作品ってことか?と言われると、いやいや、そうじゃないけど…と即座に否定したいが、どうなのだろうか。…やはり、あの終盤の部分に心底驚くことは初見時でなければ無理とも言えるので、それだけはネタバレ禁止かも、と言いたくなるところはある。

二人が向かいあって酒を飲む、はじめは大人しく、後から酔って騒がしくなるとか、そんな一連のシーンが、最初はキム・ミニで、次に浮気相手の女で続く。この映るもののパターンを極端に切り詰めようとする意志。ちょっと油断すると、さっきのシーンで酔っ払ってたのは誰だっけ?となりかねないくらいの、紛らわしくややこしい繋ぎ方ばかり好んでされている。たぶんそうやって編集している途中でたまたまエピソードが生まれて物語が事後的に発生したのではないかとすら、疑いたくなるほどだ。まあさすがに、その作家の「ワザ」は観ていて僕にもわかるようになってきた。そして終盤、タクシー内のキム・ミニの顔が完璧に素晴らしい。