SIMON GOUBERT

たとえばコルトレーンフォロワースタイルと呼ばれるようなジャズの演奏は多いだろうが、それはつまりコルトレーン的な良さをよくわかっている(強く魅了されている)人が、それを演奏においてことさら強調するというか、その確固たる良さをモチベーションにしてさらに高く跳躍しようとするわけだから、フォロワーの方が本家の演奏以上に気持ち良くてカッコ良くなってしまうことも多くて(聴く側も「解釈への共感」として聴けるので)、そういう現象は絵でも音楽でも小説でもよくあることで、ジャンルとかルールの枠にがっちりと守られた中で、表現が喜びを謳歌しているようなものに触れることでは、心底驚かされることはないとしても、それはそれで体験としてはとても幸せなものである。

で、一時期何度となく聴いたのがSimon Goubertの「HAITI」(1991)というアルバムで、たしか1992年だったと思うが新宿のUNIONジャズ館にいたらたまたま店内でのNow Playingがこのアルバム冒頭の"Take Five"で、これぞまさにコルトレーン的に熱く燃えるような演奏で、たちまちのうちにコロッと一発で参ってしまったのだった。コルトレーン的といっても色々あるだろうけど、ある曲を三拍子とか五拍子とかその他変拍子とかのリズムでモード風にアレンジして熱く演奏すると、如何にもそんな感じになって、そういうのがたまらなく好きになってしまう病気というのがあって、僕はかなり長くその症状が続いていた。本作ではスティーブ・グロスマン(ts,ss)がご自身の役割をじつによくわかっていて、まさに昇天的に盛り上げていて、これは当時聴くたびに凄まじい高揚感で何度も意識を亡くしそうになったものだった。今日久々に聴いたけど、何十年ぶりだけどさすがに聴き飽きていてすでに新鮮さは感じないのだが、サブスクの便利さで同アーティストや周辺の聴いたことのない音源がいっぱいあって、他にもいくつか聴いているところだ。それにしてもこの人の名前、シモン・グーベルと読むのか、フランスだからな。三十年近くサイモン・ガウバートと脳内発声していた。(実際に口にする機会は無かったと思うが)さらにこの人、MAGMA在籍歴があるのか…。

Haiti SIMON GOUBERT
https://www.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_knE58AEqiSGIDqMhA4OqoHvGt5W8SIkNk