動物園

先週は金沢動物園に行って、昨日は井の頭動物園に行った。休日に動物園に行くこと、これは近代人、ことに二十世紀以降を生きる者たちの基本行動である。但し今では動物園もすっかり枯れた施設に成り果てたが、昔はそうじゃなかったらしい。動物を見に行って、動物に怪我をさせられたり、運が悪ければ落命することもめずらしくなかった。そんな始まり方で、あのときから動物と人間は距離を縮めたのだった。もちろん今では高い柵や分厚いアクリルガラスが人間の身を危険から守ってくれているし、動物たちも整然と管理保護されているから、昔のようなアクシデントは起こらない。だから最近の動物園に行くと、我々はむしろ鳥類ばかり見るのだ。鳥はいつも大体、それは鳥に限らないのだが、いつも大体眠っていて、我々の眼にはただの羽毛の塊にしか見えない。そんな種が多い。もちろん活発な鳥もいる。水鳥はおおむね元気だ。鴨や鷺は勢いよく水飛沫を上げて羽根を洗っている。何しろ動物園で檻に入った鳥は、ことに渡り鳥は哀れだ。もはや本来の自分の生を想像することすら忘れてしまったかのようだ。しかし彼らと同種の鳥は、我々がわざわざ檻を覗き込む必要もないほど、近所の空を今も平気で飛び回っているのだ。数ヶ月おきに檻の中の彼らと入れ替わっても何ら問題ないくらいだ。しかし今に至って、そんな境遇さえ彼らにとってはさほど不可解でもないらしいのだ。