たぶん朝方、夢を見た。

あらかじめ調べた道順の通りに現地へ向かう。ギャラリー兼制作アトリエとの事だったが、外観はふつうの古びたアパートだ。玄関を開けると、手前と奥とで六畳くらいの部屋がつながっている間取りの、敷居を取っ払ったワンルーム風になっていて、奥に作家が横を向いて座っていて、訪れたこちらに気付いてない。手前の部屋はそこらじゅうにおびただしい量の制作中の画材だの木枠だの紙だのがうずたかく積まれていて、しかしよく見ると壁や床の隅には完成してるっぽいタブローが立てかけてあって、それを鑑賞しろ、ということなのだろう。

作家は若い女性で、金髪に染めた髪には派手な飾りがいっぱい付いていて、かなり肥満した姿を白っぽいふわふわのドレス風衣装に包んで、床にべったりと座って前屈み気味に背中を丸めてた姿で、外見だけでそう言うのも失礼ながらたぶんちょっと面倒くさそうな感じには見えた。とはいえその様子は真剣そのものの、今まさに制作中で、高まりきった集中力の眼差しでキャンバスを見つめつつ、小刻みに絵筆を動かしていて、すでに手前の部屋をおそるおそる徘徊し始めたこちらには目も向けない。

それにしてもあと一歩でゴミ屋敷と見紛うほど散らかった部屋ではあるが、それら錯乱した様々な物体はほとんどが白色のまるで降り積もった雪を擬したかのようで不思議と不衛生な印象はない。そして仕上がっていると思われる作品のいくつかは、あらかじめウェブで見て予感されたとおり、確かな絵画的魅惑をたたえているのだ。どちらかといえば古い気質の方向性だとは思うが、若さっぽい雰囲気に流れるようでそうでもない、勘どころをきっちり抑えているというか、大人の仕事らしく、要所をきちんと手堅く纏め上げている。なるほど面白いなあ、こんな場所でこんな画家が、いつかどこかの何かから何かを、引き継いでいるのだなあと思って、想像された過去に属する遥かな景色を、ふと思い浮かべてしまった。

目が覚めたら四時過ぎで、当然ながら起床時間ぎりぎりまでの二度寝をこころみたが、なぜか眠れなくなった。与えられた睡眠時間をきちんと使いこなせないと、ただ捨てるばかりでじつに勿体無い。