暫定

新オフィスの窓から見下ろすと、埋立地の向こうは海だ。でも横浜の海はやはり、海というよりも物流の窓口のようにしか見えなくて、要するに広大な駅みたいな雰囲気でしかない。水平線の先にきちんと、次の停車駅が待っているような感じがして、あまり開放感を感じない。が、いずれにせよそういうものは、見えないよりも見えたほうが少しはマシだ。夜になると、暗闇にいくつかの光がきらきらとしはじめる。それほど遅い時間でもないのに、オフィス内はすでにほぼ無人だ。現在の薄暗く荒涼とした無人の静寂は、おそらく今このときだけのものだ。来月になったら、このフロアも今の何倍も人が増えるはずで、それまでの約一ヶ月くらいは、後で思い出したとしたら、ちょっと特別な期間として記憶に残るはず。