館林

缶ビールをぶら下げて特急りょうもうに乗って一時間ばかりかけて群馬県館林へ。地平線の彼方まで広がっているのかと思われるような広大な田園風景の真ん中にぽつんと唐突に現代建築みたいな建物が建っていて、それが群馬県立館林美術館だった。東京都内の美術館ではありえないような、おそろしく広大で贅沢な空間。空調の費用だけでもすごいのではないだろうか。これが、群馬県的なスケール感とも言えるのではないか。このような土地に生まれ育ったらスケール感覚変わるだろうなと思う。(自分の実家だって相当な田舎だが、ここまで四方に何もない広大さはなかった。)企画展示「みつめる−見ることの不思議と向き合う作家たち−」。平面を取り扱う女性作家の作品が部屋ごとに展示されている。真夏の閑散した空間においては、やはりこういう展示がじつに味わい深くて楽しい。じわっと満足感に浸りながら会場内を回遊し続けた。

 

北千住に戻ってきて早めの時間からまた酒を飲みながら妻を相手に色々話す。自然派ワインとほんとうに化粧ッ気ゼロの素朴な野菜料理のオステリアが大変よろしい按配で、最後のジェラートに高Alc度数なお好みのリキュールをかけてどうぞな締めドルチェがほとんど罪の味というか後ろめたくなるような禁断の美味しさであり妻が目の色を変えて喜ぶ。帰宅して、なんとなく「モヤさま」をテレビで観てたら、さまーずと一緒にロケするあたらしいアシスタント女性が紹介されていて、その人が新人でまだ二十二歳で、その女性を迎える二人の五十歳を越えた男性タレントが完全に親目線というか、保護者的態度というか、どうがんばってもそこには対等さや平等さは成立しない、もう手遅れ、どうしようもないという態度に終始しているのが映像の端々から感じられて、ああなんという嘆かわしいことか、この年代の男性が若い女性と相対するならばどうしてもこのような態度にならざるを得ないのかと、苦々しく、しかしおそらく誰もがそれしかない、それ以外の選択肢はもはや喪われたという、あきらめと納得の感もわき起こってきて、色々と複雑な思いであった。