築地、銀座、渋谷

休暇。妻が出掛けたあと二度寝して、十時頃ようやく起きる。こんなに寝たのは久しぶり。昼前に出掛けて築地で昼食。一時過ぎに行けば店内も次第に空くとの予想通り、やがて自分一人に。この方が酒が注文し易いので快適。と思ったら地元っぽい老夫婦が入店、振る舞いで常連とわかる。店の人との会話の地元感、東京の人だなと思う。店を出て近くのカフェのテラス席へ、その後移動して銀座のカフェで夕方まで読書。乗代雄介「最高の任務」読み終わる。過去作品にもくりかえし出てくる亡き叔母の存在。主人公にとっての叔母は、書物の世界へはじめて自分を導いてくれた師であり、誇らしくも手の届かない友人であり、価値の源泉であり、この世のよろこびの根拠で、心の支えで、サリンジャー作品にとっての「シーモア」のような存在。外国小説の翻訳文体のような、本心をアイロニーに紛らせた、こまっしゃくれていて言葉の端々に皮肉を効かせないではいられない、そのようなやり方の語り方と考え方。

夜になって妻と合流し渋谷O-EASTでCRCK/LCKSのライブへ。メンバーを従えて小田朋美が一人フロントに立つという、これまでとは違うステージ立ち位置。小田朋美はいつもならメンバーの一員でありボーカルを担当するキーボーディストという風情だったのに、今日は手にマイクを持って歌うシーンが何度も見られた通り、バンドの主役はこの人であると明確に打ち出された感じ。今まで観たCRCK/LCKSのライブでいちばん楽しかったと言えるかも。今日はわりとベースに意識を向けて聴いていたのだが、越智俊介は演奏も超絶上手いがコーラスもすごく良かった。ベース音がもっとクリアに聴こえてくればいいのにと思うこともあったが、この音全体の感触が最近のバンドの考え方なのかもしれない。最後のほう、小田朋美がギター構えた曲のときはさすがに笑ってしまった。小田朋美って美貌で才気あふれて何でも出来るマルチな音楽家というイメージだったんだけど、ギターはあんまり弾けない人だったのか(笑)。ピックをもってストロークする手首の"真っ直ぐさ"が、ギター習い始めて間もない女子高生みたいで、え…うそ何それカワイイじゃん的にポイント高くて良かったのだが、周りのメンバーの口元が全員だらしなく笑いのかたちになってるし、観客も全体で「苦笑」みたいな雰囲気になっていたのがまた可笑しかった。