初春

会社を出ると、風がとても冷たくて、コートの前を開けていると大きく翻ってマフラーごと飛ばされそうになるのを手で抑えて駅までの道を急ぐ。通勤の朝と夜にかならず思うことだけど、マルイやスカイビルやそごうの立ち並ぶあいだを抜けて駅入口までの道のりはまったく面白味がなくて、帰路の夜空に浮かび上がるベイクォーターの派手な照明にももう飽きてしまった。ビル風が上から吹きつけてきて、外気に露出した肌がすみずみまで冷却される。それで、のどがかわいたと思って、この寒さに変な話だが、よく冷えたスパークリングワインを、今飲めたらどんなにいいだろう。そして生牡蠣にレモンを絞って一息に吸い込めたら。オイスターバーで生牡蠣を食べるなら、横浜にお店はわりとたくさんあるけど、じつはどの店も同じ会社の系列店である。だから、そごうに行ってもモアーズに行ってもベイクオーターに行っても、同じメニューが出てくるし、同じ「お通し」が出てくるし、そのメニューに載ってるワインから選ばなければいけなくて、それがつまらない。東口とスカイビルと野毛の入り口にある店も、別の会社がやってるチェーン店で、牡蠣を扱う店は十年前とくらべたらずいぶん増えた気がする。身近な食材になってたぶん安全性も高まっただろうけど、均質化してしまったぶん店としての面白味は減ったとは思う。が、牡蠣を気軽に食える世の中であった方がいいので、それはそれで良くて、願わくばもうちょっとバイザグラスでいろいろ取り揃えてあればと思うが、いや、それも難しいだろうなあ、わかります。そんな風に考えを巡らせつつ、寄り道せずに帰宅。