ブイヤベース、ヴィレッジ・バンガード

なぜか不意に「ブイヤベース食べたい…」と思った。一度そう思ったら、もうその考えが頭から離れなくなってしまった。どうしよう、会社を出たら、帰りに食材を買って、家で作るか、でも今日はそんなに早く会社を出れないだろうし、帰宅してあまり遅い時間から面倒なことしたくないし、だったら、いっそどこかで外食してやろうかとまで思う。一軒思い浮かぶ店があるのだが、いやいや、それこそ会社から向かってもラストオーダーに間に合わないかもしれないし、もし間に合ったとしても短くても1時間半コースになっちゃう。すなわち今日は無理筋だ。なら明日は土曜日だから土曜日の夜にやればいいじゃないか。そうだそうだ明日にしよう、そうしようと思った。

 

それにしても、今週は涼しかった、肌寒いと言っても良いくらいの気温が続いた。

 

かなり昔の、ポール・モチアンのインタビュー記事みたいなのを読んでたら、ビル・エヴァンスが61年にライブレコーディングしたヴィレッジ・ヴァンガードで、ライブ期間中は夕方の5時から夜中の2時まで、合計5セットのショーをこなしたとあって、その労働量に驚いた。8時間拘束ってサラリーマンかよ…って感じだ。それでもバンドとしてはもう誰にも止められないほどクリエイティビティがmax状態で、自分らが何て凄い演奏をしているのかと自分らに驚いているような有様だったらしい。にもかかわらず、客は不入りで、ある日など客席に3人しかいないセットもあったらしい。客いないから、もう今夜は帰ろうかとエヴァンスがオーナーに言ったら、ゼロじゃないんだからやれと言われて仕方なくやったとか。…あの61年のビル・エヴァンス・トリオを閑散とした店で聴いた3人の客がいたのか(聴いてなくて酒飲んで居眠りしてたのかもしれないが・・)。まあ、当時あの店にいた客がろくに演奏を聴いてないのは、レコードを聴けばすぐわかる。そういうものなのだ、それでもやはり、とても不思議なことでもある。それは多分いつまでもふに落ちない話として残り続ける。ただしその雑誌の他の記事に書いてあってなるほどと思ったのは、ビル・エヴァンスという人は自分のパフォーマンスについて、目の前の聴衆とか雰囲気とか場の空気みたいなものから直接はさほど影響を受けないタイプの演奏家だということ、ただ俯いて自分の世界に浸り切って自分の演奏に没入しているので、客が少なかろうが聴いてなかろうが、あまり関係なかったとは言えるのかもしれない。これがもっとサービス精神旺盛な、客を喜ばせるのが好きで、客とのヴァイブスを交観し合うようなスタイルだったら、また別だったろうと。そしてビル・エヴァンスのような「没入系」ミュージシャンの系譜というのも、ある意味そこから始まったとも言えるのか、と。

 

ちなみにヴィレッジ・バンガードの、その時の3人のギャラは1人10ドルだったらしい。まあビル・エヴァンス知名度を上げていくのはそれ以降だから、だろうけど、それにしても驚くべきことだ。