ひなげし

朝の五時頃に目が覚めた。早いけど善は急げとばかりにまとめた荷物をまとめて部屋を出てチェックアウトして帰路につく。土曜早朝の横浜は無人、電車もほぼがらがら、現場へ向かう土方のお兄さんたちがまばらに座ってるくらいだ。朝七時過ぎ、最寄り駅に到着する。駅前のあの店もこの店もすべて臨時休業か営業時間変更の貼り紙。快晴の空だが風やや強く肌寒い。桜はほぼ散ってしまったようだ。道路脇の植え込みに、ひなげしがいくつもいくつも花を咲かせるようになると、いよいよ春がきたことを感じるのだと妻は言う。帰宅して、この数日間について互いの近況報告などしつつ朝食。その後ぼんやりと眠気に頭を押さえられっぱなしのような一日を過ごした。土曜日の実感があまりわかない。このまま明日の夜になったら再びホテルに戻らなければいけないことを面倒な気分とともに思い出して、それでようやく今このときが、ほんのわずかな猶予時間であることを自覚する。