宇佐美りん「推し燃ゆ」を半分くらいまで読んだ。小説的な的確さ。読み手に何事かを説明していくのがものすごく上手い。伝えようとするところが過不足なくきれいに伝わってくる、その心地よいくりかえしでスムーズに小説の世界がひらかれ展開していく。何かを語るときの、一個一個のボリューム感の丁度良さ。平常時でもテンション高めでも語り自体の的確さ自体には変動がない。語り手の「私」は、推しに命を賭けて生活のすべてを推しにささげていて、勉強できないしバイトも怒られてばかりだし高校も中退して家庭内もギクシャクで体調も精神状態もかなりヤバそうで、かなりダメダメな子なのだが、語りの的確さは保たれている。「私」は何があっても、じつは冷静沈着な人間…ということではない。「私」はどんどんヤバい状況になる。でもそれをを語り手=「私」は常に冷静に語る。そのヤバさを受け止めているのは読み手だ。きれいな感情移入。これぞまさに小説的な一人称の語り手だなと思う。