サウダーヂ

空族「サウダーヂ」(2011年)面白かった。三時間もあったけど最後まで楽しかった。地方都市に暮らすそれぞれの人たちが、厳しい現実あるいは自らの苛立ちによって次第に追い詰められていく、仕事が減っていく焦りの中でタイパブのホステスと浮気する土方の兄さんとか、過剰な意味を担った水とか化粧品とかのアイテムを取り替え引き換えしつつ、議会議員活動ともつながった社交パーティーにケバケバの衣装で出掛け名刺交換に余念ないエステ勤務のちょっと壊れた奥さんとか、客に外国人が多すぎて日本語ラップの意味をまるでわかってもらない苛立ちを募らせるうちに外国人排斥の思いを深めていくラッパーとか、イベントのオーガナイズを仕掛けることに命をかけて音楽でみんなハッピーでラブアンドピースになろうと超前向きで地元の同級からはウザがられている東京感化女子とか、そういう登場人物たちの、言ってみれば、よくある地方の閉塞状況下のありふれたドラマだとも言えるのだが、場面ひとつひとつがすごくぶっきらぼうで、もし従来的なジメジメしたドラマ作りのプロみたいな人が作ったらこうはならないだろうと思うような、不思議に乾燥した、底の抜けた明るさの感触があり、観ていてあまり物語に入っていけない感じ、感情を操作されないまま観ていられる感じがいい。ヒップホップユニットのライブハウスでのパフォーマンスのシーンのシーンなど素晴らしい。その土地の香りをはっきりと嗅いだような感じがある。話の結末は救いがない感じだし、浅はかというか、イヤな話ではあるのだが、観ているとそれもわりとどうでもいいことに思える。しかし地方とはいえ、それぞれの人々に家族や親族的なつながりは感じられず、みな単独あるいは夫婦のかたまりで個々に動いていて、そのへんは東京とあまり変わらない印象がある。舞台は甲府とのことだが、東京郊外と言われても違和感ない感じもする。少なくとも、夜のライブハウスや音楽シーンが外国人も現地人も入り乱れるかたちであのくらい盛んなのだとしたら、それは凄いなと思う。