走り笑い

我々とすれちがった小学生くらいの女の子ら三人が、仲良さそうに、まるで絡み合うような体勢で、大きな声で笑いながら走っていく。何がそんなに面白いのかわからないが、三人が通り過ぎたあとでも笑い声が聞こえてくる。

あんなふうに大笑いすることなんて久しくないと思った。爆笑したなんて言っても、じつは大して笑ってもいないのかもしれない。いや、テレビを見てバカみたいに笑ってるときもあるだろう。あっただろうけど、でもおそらくああいう笑い方ではない。そもそも、大笑いしながら走るなんて、今の自分には絶対に不可能だ。やろうとしても無理だ。笑うか走るか、どちらかしか出来ないし、そんなことを考えてる時点で、すでに自分のなかから笑いたい気持ちは逃げた後だろう。

よく駅前とかで見かける、若い人たちが二三人で歩きながら、楽しそうに盛り上がっている感じもそうだ。やたらとデカい声で話して、大笑いして、楽しさが爆発していて、楽しくて楽しくて仕方ない感じ、はげしく興奮した笑いの渦中にいて、仲間たちと盛り上がったままで、外を歩いてるなんて、もはや家も外も内側も外側もなし崩しのまま、ぜんぶ一緒くたになってるんじゃないか。

でも昔は、僕だってたしかにそうだった、大笑いしながら、真夜中の盛り場を歩いていたこともあった。小学生のとき、友達と一緒に学校から帰る途中で、あまりにも面白くて、ゲラゲラと笑って笑いが止まらなくなって、立ってられなくなってその場に屈みこみ、ほとんど地面に寝そべった状態で苦しみながら、ずっと笑い続けたりした。笑いが続いてる間は、心身の制御がまるで不可能になった。全力疾走しながら、矢継ぎ早に喋って、思ったことを全部言い尽くしたりもした。