パッケージ

久々に神保町の古本屋街をうろついて、古本というのは今後もしばらくは廃れずに残り続けるだろうけど、中古CDとかDVDとかblue-rayというのは、いまさらながら、もう消えゆく商品なのだろうなとは思った。自分はこれまでの人生で経験してきた音楽、書物、映画については、中古やレンタルの利用で体験した割合が圧倒的に多いはずで、そういうものがこの先減っていくならば、それはなかなかつまらないことのように思ってしまう。もちろんネット配信とかサブスクリプションなど、昔では考えられなかったようなサービスも出てきたけど、自分がちょっと物足りなく思うのは、加入サービス枠を問わずこれを聴きたいこれを観たいと思ったときに、探せばそれを入手できるかもしれない中古市場の可能性が減ってしまうということだ。インターネットの普及による、アマゾンや全国の古本屋、レコードショップ、規模や地域を問わず対象にできる強力な商品検索の実現、あるいはユーチューブがもたらした映像コンテンツへのアクセシビリティの革命的な向上は、もし二十代の自分に来たる未来を教えてあげたら絶句して気絶しそうなほどの、まさに夢のような状況の実現ではあるが、つまりそういったコンテンツを買い求め触れるにあたり、この二十年間で、ネット技術のとんでもない恩恵を受けてきたという自覚はあるのだが、しかし結果として物流に乗るようなパッケージ製品が減り、レンタルショップもいい加減なエサ箱を並べただけの中古屋も街なかから無くなっていくというのは、インターネット上に載ってない過去の旧作に出会うハードルがグッと高まるということなので、それはちょっと不便というか面白さが減る…とは思う。現実にある在庫情報にくまなく検索インデックスを貼れたことで実現したのがロングテールなどと呼ばれた現象だろうが、あたりまえのことだけど在庫そのものは現実の世界にありアマゾンなどの保有資産ではないので、現実の在庫(店舗)が失われればアマゾンの検索結果も減って、結果的に配信のラインナップだけで考えてしまうのでロングテールも消えるだろう、そうなりつつあるのが現状だと思う。いまの電子書籍にも音楽配信にも映画配信にも、リアル中古屋的な雑多さが無くて、つまり管理外で見えないラインナップへの期待みたいなものもなくて、もうちょっと、そういう市場というか、そういう(良くも悪くもいいかげんな)アプロ―チが可能な余地はないのだろうか。