さいきん我が家ではいくつかの食器皿を新たに購入した。今まで使っていた皿類が、一枚壊れて残り一つしかないとか、ちょっと欠けてるとか、そういう例がじょじょに増えてきて、適当に思える大きさや深さのものがきちんと揃ってないことが多くて、二人で囲む食卓の皿のレパートリーがどうにも恰好つかなくなってきていたので、その状態を解消するために、主役級の皿類を一部刷新することにしたためだ。

そのため外出時に食器屋に寄って、あれがいいこれはいやだと吟味逡巡する機会が最近多かったので、東京国立近代美術館の展示物も、ついそんな目で見てしまうようなところはあった。まあ、やっぱりいいものは高いよね、ではなくて、やっぱりいいものは古いよね、みたいな、典型的な素人鑑識だが。

現実に家庭で使う目的で皿や食器を選ぶにあたってやはり価格は重要である。なぜならそれらは消耗品であり、いつかかならず壊れて買い替えるものだからだ。いつかこわれるもの、あるいはいつか消えてしまうもの、食べたり飲んだりしたらなくなってしまうもの、そういうものに対して、幾らまで金を出せるか。そのことは決して、かるく考えて良いことではない…。

ただし酒器は…ワイングラスも…そこはやはり、多少なりとも良いものを使った方が、結果的に良いとは思っている。これはもはや仕方のないこと。いつか必ず割ってしまうけど、そのリスクは受容しつつ、できるだけそれなりの水準のものを…。

それにしても世間の皆さんは、食器類もさることながら家庭で使う調理用器具---鍋とか---でも、じつにものすごい値段の高級品をお持ちなのだなと驚かされる。包丁とか、鍋とか、フライパンとか、ちょっと良いものって、じつに高い。

ところでじつは先日、妻が、収納棚の奥底から、未使用の無水鍋を発掘してきたのだ。たぶん結婚祝の品として、どなたかから戴いたものだと思うのだが、そんなことすっかり忘れてて、なんとそのまま二十年以上、一度も使用されぬまま棚の奥で眠り続けていたものである。(十年の保証書が付いてたけどとっくに保証切れ)

このたびの思いがけぬ出土品はまことによろこばしきことであり、我が家としてはさっそく書店に駆けつけ無水鍋用レシピ集を購入してきました。これからしばらくのあいだ毎夕食そのレシピメニューが続くことになるだろう。いきなりキッチン棚上段最前列に配置されたその鍋は、今現在、我が家にあるうちで間違いなくもっとも高価な調理器具である。