コーヒーとタバコ

さいきんまたコーヒーをわりと飲むようになったと思う。一日のうちのどこかで、大体夕方あたりで、のみたくなってくるとオフィス近くのコンビニの百円でカップを受け取ってセルフでいれるコーヒーを買ってのむ。のむだけ。スマホを見るとか窓の景色を見るとか、そういうこともなしに、ただひたすらコーヒーをのむ、一口のんでは息をつき、またもう一口のんでは息をつく。それをくりかえして、手に持ったカップを一度も机に置くことなく、最後までのみ切ってしまう。空になったカップを捨てて、ふーっとため息をついて、体内にコーヒーの熱と香りをしっかりとたくわえたまま立ち上がってオフィスに戻る。

むかし、タバコを喫ってたときは、喫いかたがそんな感じだったなと思う。タバコだけ喫ってた、というと意味がわからないが、タバコだけ喫ってたのだ。それ以外の何の目的でもなく、喫うことが目的で喫っていた。深く吸い込んで、ふーっと吐く。身体の内側にタバコがしっかりと行き渡るのを感じる。そんな人達同士で、灰皿を囲んでいた。あのときの他人同士の距離感が、いまは懐かしく感じる。たまに喫煙所のなかに人が集まってるのを見かけると、あの中ではまだ昔のままだろうかと思う。