昔の喫茶店

出社までに少し時間があったので、駅前の喫茶店に寄った。やや古めかしい外観の、昔っぽい喫茶店だ。ドアを開けたら店内タバコの香りに満ちていて驚いた。今どきめずらしい、昔の喫茶店だった。客もそういう店だとわかって利用しているのだろう、女性一人、男女二人連れ、年配男性二人など、さまざまな客層がもれなく喫煙していた。一応それ風な制服を着て、髪を青く染めた子が、水とメニューと灰皿を持ってきてくれた。おお…昔の喫茶店ぽい、と思う。ブレンドコーヒーを注文して、周囲を見渡す。店内の会話群が近く遠く、とりとめのなさそのものが音になったような重なりになって聴こえてくる。やがて運ばれてきたコーヒーに口をつけると、唇を火傷しそうな熱さで、鍋で温め直されて沸騰手前でカップに注がれたのであろう独特の味と香りがして、こんな適当なコーヒーは最近なかなかお目にかかれない。おお…まさに昔の喫茶店だな、と思う。会計のとき、予想通り現金払いのみだったので、すまないがと言って一万円札を出した。受け取った釣りを仕舞いつつ店を出たら、外の新鮮な空気が冷たく澄んでいるように感じた。