マーキー・ムーン

今年もあと二日で、さすがに朝の電車は閑散としていたし、オフィスも人はまばら。しかし夜になって会社を出れば、駅構内や繁華街は大変賑わっていて、外からのぞくとどのお店も客でぎっしりだった。久々に行った店の、かろうじてカウンターの端に入れてもらえたおかげで、お店の皆さんに年内の挨拶ができて。

改札に向かう途中、駅なかにあるショッピングフロアのBGMが喧噪と混ざり合って、たぶん知ってる曲のはずだけど聴き取れなくて、しばらく耳をすましていると、かの印象的なフレーズが耳に飛び込んできて、あ、マーキー・ムーンだ。とわかった。

ものすごく久しぶりに聴いた…というか、こんな年末の駅なかの人でごった返してるところで、ふつうマーキー・ムーンがかかるものだろうか。何かの間違い、あるいは勘違いではないか、それはほとんど啓示のようだ。その唐突さが、まるで夢の出来事みたいだ。とつぜん望んでもいなかった当たりくじを引いたかのようだと思う。

しかし手元のスマートフォンから検索すれば、ただちにマーキー・ムーンを探し出せてしまうのだからすごい。考えようによっては、それで啓示を自らキャンセルし、魔法をわざわざ解消させているのかもしれないが。

聴きながら、家まで歩いて帰った。まあ、古いよなあ…と思いながら。