十月

家を出た直後は、もしかすると雨が降るかもと思ったのに、ほどなくして曇り空から一気に晴れ渡って、着てきた長袖シャツを脱がずにはいられなくなる。Tシャツで図書館まで歩き、建物の中に入ってからもしばらく汗が引かないほどだった。

図書館の中で、久々に体調のコントロールに対する困難さを感じた。最近はそうでもなかったのだけど、どうもこの施設内にいると、動悸がしたり頭痛がしたり妙に息苦しくなったり、不思議な体調変化を感じることが少なくないのだ。

そのためこのあと出掛ける予定を急遽キャンセルし、食材を買い物してすぐに帰宅した。帰りの道もまるで真夏のような日差しが降り注いでいる。しかし空の向こうにはまるでインクの如く黒い雲が立ち塞がるかのように前方を染め上げている。空に塗る色を間違えてしまった風景画のように、頭上からは眩い光が降り注いでいるにも関わらずだ。

十月らしいなあと思わずつぶやいて、え、どこが?と聞き返されるが、どうも自分の記憶にある十月は、こんな疑似的な真夏みたいな様相を呈する日が、めずらしくないのだ。熱中症の危険、夕立の危険、日差しに心身を削られる危険のもっとも高い月な気がするのだ。