健康診断

明日早朝から健康診断なので、今日はお酒を飲まずに一日を終えるのだ。まったく酒を飲まない、そんな日は今夜だけのことなので、今夜はひじょうに手持無沙汰であり、せっかくの週末だというのに、何をするにも気が乗らず、仕方がないから早く寝てしまおうと思うのだ。

診断日当日に保健センター内で名前を呼ばれるのを待っているときよりも、こうして前夜に酒を飲まず眠る前の時間を過ごしているひとときのほうが、よほど「待合」の気分は強いのである。それはいつもの夜に対して、純然たる待機にて迎える特殊な時間であり、満たされぬ空隙を、そのままに維持せよと、ひたすら現状維持、大きく息を吸って呼吸を止めて、そのままじっとしてと、それに従ってる今ここだからだ。

しかし他人から命令されてそれにしたがうというのは、今更ながら、楽しくて安楽で生きる意欲をもらえるものでもある。それどころか、あろうことか、もっとややこしいことを指図されたい、お前の身体は悪い、ろくなものではない、言う通りにしないとえらいことになるぞと言われたい、それに慄きたい、高みから判断を下す相手の、それみたことかの態度に、ふさわしい下方からの反応を注ぎ込みたい。

でも機を見て、その流れに背きたい。これまでここまでべたべたと触られてるのに、今さら虫がいいのかもしれないが、今まで何ほどのことでもなくおざなりなのだから、どこかで見限ってもいいとも思う。

おなかのなかに、異変があるのかないのか、あなたは漱石?あなたの体内に、何があっても、もうどうでもいいじゃないですか、仰臥してればいいじゃないですか。こわがらずに、死んだらいいじゃないですか。そう言ってくれる人はいないし、そう思える私もいない。