潤滑油

長年使われて、使い古された道具。それなりに手入れは行き届いていて、注入される機械油が芯まで沁み込んでいて、今でも必要最低限の役には立つので、必要十分ではあるけれど、さすがに新品同様とはいかない。新品ならではの滑らかさ、もしくは動きのぎこちなさや生硬さはすっかりなくなって。ほぼ抵抗なく、だらっと重力のなすがままであるところを、留め具でかろうじて支えられてる。癖や注意すべき点など熟知されているし、今さら交換する気もないし、もし新品に交換できたとしても今更使いこなせないのは間違いない。引き続き、これを使い続けるしかない。そういう道具が、つまり自分の身体だと思う。とくに最近、酒を飲んでいるときに、それを思う。酒を飲んで酔うときの、酔い方が昔と違うので、そう思う。酔い方というか、あまり酔わなくなってきた気がする。観葉植物にもう充分に水をあげてしまって、これ以上あげても、ただ鉢の底から水が流れ出るばかりみたいな、そういう無駄な感じがしてくる。今更どれだけ潤滑油を加えても、もう大して意味はないのかなとも思う。