ぎんぴら、サメ

ぎんぴらという料理が、うちではよく食卓にあがるのだが、これが、おお…と唸るほど、美味しいのだ。つくり方はとても簡単、いんげんとアスパラとピーマンを切って、ごま油で炒めて塩胡椒をふるだけ。それだけなのに、もはやほとんど完璧な野菜料理ではないかと言いたくなるほどに美味しい。油を使った炒め料理のジャンル内でも、肉類とかを遥かに凌ぐほどの、最高レベルの品に近いのではないか。香りよくて、どんなお酒にも合うし、野菜と油と塩とスパイスが、最小で最大限の仕事をしつつ、がっちり組み合わさっているという感じがする。

塩は、食物の味をぐっと引き立たせるけど、考えてみれば不思議なことだ。塩分があるから、素材の味がよりわかるという効能がある。たとえば肉類ならば、塩無しでそれを食べても、かなり味気ないことになるだろうと思われる。野菜もそうで、前述のぎんぴらなどまさにその成果そのものと言った感がある。そしてもちろんごま油のはたらきも大きい。野菜を美味しく食べるために、油を組み合わせるというのも、あまりにも基本的なやり方なので今更なんとも思わないけど、これを最初に考え出した人はすごいと思う。塩はともかくそのために抽出された単体としての油は、料理の歴史上いつ頃から登場するのだろうか。

ジョーズ」という映画を観る若い人は、あの映画に出てくるサメを、如何にも作り物の偽物っぽく思うのだろうか、僕は、あれを見ると、いつも胸がわくわくしてしかたが無いのだが、世代によっては、さすがにあれはチャチ過ぎて観てられない、と感じる向きも多いのかもしれない。だとしたら僕はまったくそうは思わないので、かなりラッキーだったと思う。何度も言うけど、あれは出てくるたびにヤバイ。血沸き肉躍るとはこのことだ。ああいうものを楽しめるのは、もはや一定年齢以上に限られるのだろうか。基本、特殊撮影は時代によって品質が変わるけど、いずれにせよ映画の本質にさほど関わらないので、その優劣の、面白さへの影響度は低いと思われるのだが、それにしてもさすがに時代を感じさせてしまったら、というのはあるのか。でもあのサメが海上から出てくるのは、ほとんど神様があらわれたくらいの興奮があるけどなあ。