小川

西武線小川駅に、かつて自分の通った高校はある。久々にその駅に降り立ち、おそらく三十年ぶりに、学校までの道を歩いてみた。

駅から校門までの道のりは何通りかあって、いずれにせよおよそ15分から20分くらいは掛かるのだが、すべてがうろ覚えで、いま歩いている道が当時、毎日通った道なのかどうか、まるで心許ないまま、おそらくこの方向という思いで、時折グーグルマップなども確認しながら歩いた。

やがて、校門があらわれ、奥に建つ校舎が見えた。休日なのに部活動や何かの検定試験会場になってるらしくて、やけに人が多かった。おかげで敷地内をじっくりと見ることが出来た。なつかしいという感情はまるでなくて、どちらかと言えば未知の場所、身に覚えのない景色という感が強い。もちろんそんなはずがなくて、かつてここで三年間過ごしたことは確かだ、記憶にあるいくつかのエピソードやイメージの下地となったのがこの場所だ、という思いもある。どちらかと言えばその事実らしきものをたよりに、目の前の景色に意味づけしている。答え合わせのような、まるで映画のロケ地を巡って歩いているような。