中間地帯

水泳を終えて、西口に向かってうす暗く汚れた横浜五番街商店街を歩いてると、駅に直結したデパートの仕事を終えて、五番街の端を通って、おそらく従業員詰所のような場所へ向かって歩いていくのだろう女性たちを、よく見かける。皆きちんとした制服を着て髪もメイクもばっちり整ってデパートらしい華やかさに満ちた雰囲気だけど、仕事を終えた直後の疲労と倦怠の物憂げな雰囲気をまるで隠そうともせず、むすーっとした顔で、あるいはぼけーっとした表情で、私物の鞄を肩に掛けて、肩を落として背を少し丸めて足を引き摺るようにして歩いている。ディズニーランドとかの着グルミが、まるで愛想も愛嬌もなくうつむいてトボトボと歩いているようなものだ。照明は付いてて看板も光ってるけど閉店しているお店のようなものだ。バスの電光パネルにnot in serviceと光ってるようなものだ。

自分が利用する最寄り駅にも、おそらく東京メトロ従業員の詰所があるようで、駅からその場所へ、制服姿のまま荷物をかかえて歩いていくメトロ職員をよく見かける。彼ら彼女らの、仕事から離れて帰宅あるいはこれから仕事に向かう、そんなときの態度や表情を見ているのも面白い。同僚ら同士がすれ違うときに、彼らはとても朗らかに、おお!お疲れ様!!と挨拶を交わすし、制服姿のまま、少し立ち話したりもする。三、四人で楽しげに談笑しながら歩いていることもある。まあ、デパートだろうが駅員だろうが、べつに驚くことでもないし、ことさらここに書くようなことでもないのだが、でもそんな人々がいるというよりも、人々を担う役割の枠から解除させる中間的な場所があって、そんな場所で人々はちょっと面白い態度を示すものだな、ということ。