Donald Fagen「Kamakiriad」はCDと聴きくらべる意味がないほどに、いま配信されてるハイレゾの音質が素晴らしい。音質が素晴らしいがゆえに、各楽器要素の融合と分離の関係、その震えるようなニュアンスが、直接肌に触れるような感覚で迫ってくる。全8曲で、どれも地味と言えば地味な曲ばかり、ある種一辺倒で、メリハリもなく単調なところもあるけど、むしろそれが良いというか、そうでなければ、この細密画の特定部分ごとに順を追って丹念に味わうような聴き方の邪魔になってしまう。めちゃめちゃクリアで純度高く跳ねているリズムの透明な飛沫のようなのを浴びながら、複数の音要素が組み合わさっていることの妙味というか面白味だけを感じるだけで良いような音楽なのだと思う。しかしまさか三十年も経ってから、このアルバムを何度も繰り返し聴くことになるなんて、夢にも思わなかった。