早稲田駅から学習院女子大学まで歩く。通用門で用件を伝え「浅見貴子展 在り在りて。―その先の光」を開催中のギャラリーまでの構内の道順を教えてもらう。広大なキャンパスを歩きながら、いつ建造されたのかと思うようなレンガ壁のすばらしい建物が紅葉した木々に囲まれて立ち並んでいるのを見て、大学ってなんてすばらしい場所だろうとあらためて思う。こんな空間で数年間を過ごすことができるというだけで、この世界に生まれてきて良かったと思えるくらいじゃないだろうか。

土曜日だからか、構内は閑散としていたが、門から左手に広がってる中・高等部には学生らの制服姿が見かけられた。校舎に挟まれた幅広な道を、女子学生ばかり七人、道いっぱいに横に並んで歩いてくる。道端に避けて彼女らとすれ違いながら、七人がああして真横に並んで歩くだなんて、そんな経験がいま、彼女らにとっては当たり前のことなのか、それがあの子たちにとって何の変哲もない日常なのかと思ったら、ほとんど突発的な感動におそわれた。七人もの友人同士が横一列で歩く、そんなのはきっと、大人になってしまったらもう二度と金輪際起こらない出来事、きっと今でしかありえない瞬間なのだと思う。

構内を出て、戸山公園を経由し、早稲田大学の方まで戻ってきて、立ち並ぶ古本屋を物色しつつ高田馬場から帰宅した。早稲田の古本屋は最近の神保町界隈の店に較べてもいい感じというか、いい具合にひと昔からふた昔前の文庫本などを多く見かけて、いわば何十年か前の、古本屋の本がもっと杜撰な感じに並んでいた頃を思い起こさせるような雰囲気がまだ残ってる気がした。